「歯科医院のスタッフ」と言っても、
いろいろな人たちがいます。

・未経験で入職した新人スタッフ
・入職して何年も経つベテランスタッフ
・他医院での経験が長いベテランスタッフ

・常勤スタッフ
・非常勤スタッフ
・週1~2回勤務のスタッフ

・既婚者
・未婚者
・既婚者でお子さんはいないスタッフ

さまざまな立場の人たちがいて、
みんな一緒に仕事をしています。

キャリアもライフスタイルも
それぞれ異なっていますので、
考え方も微妙に異なって当然です。

さまざまな立場の人がいますが、
私の経験上で言えば、

・歯科歴10年以上のベテランスタッフ
・小さなお子さんがいるスタッフ
・週1~2回勤務など、勤務時間の短いスタッフ

このような立場のスタッフさんには、
医院で新しい取り組みをする際に
難色を示すことが多い傾向にあります。

このようなスタッフに対して、
どのように教育をしていけば
良いのでしょうか?

◆協力してもらう3つのポイント

スタッフに医院の新しい取り組みを
発表した時に難色を示されないように、
伝え方や方法論には工夫が必要です。

医院の新しい取り組みに対して
積極的に協力してもらえるように、
次の3つのポイントを意識しましょう。

1)新しい取り組みの“目的”を伝える
2)取り組みのハードルを上げ過ぎない
3)変わり続けていく“意味”を伝える

これから、それぞれについて
お話していきます。

◆新しい取り組みの“目的”を伝える

あらゆることに言える必須事項ですが、

・なぜ、この取り組みをするのか?
・新しいことに取り組むメリットは?

このような【新しい取り組みの目的】は、
とにかく丁寧に伝えましょう

今までと異なる取り組みをする際に、
「スタッフに面倒くさそうにされた」
という経験を持つ先生は多いと思います。

ここで、「スタッフは新しいことに
取り組むことが嫌なんだろうなぁ」と
考えてしまうのは性急です。

新しい取り組みをすることによって、
今までになかった仕事が増えるから
面倒くさいと思われてしまうのでは…

その不安な気持ちは分かりますが、
スタッフが本当に嫌がっているのは
「新しい取り組み」なのでしょうか?

実際のところ、そうではありません。

新しい取り組みが嫌なのではなく、
「目的の分からない取り組みに
時間と労力を割くこと」が嫌なのです。

セミナーで聴いてきたからやってみよう。
勉強してみて良いと思ったことだから
やってみよう。

院長であるあなたは、そんな風に
思うかもしれません。

でも、そんな風に伝えられたとしたら、
スタッフは面倒に感じても仕方ないと
私は思います。

なぜなら、ただ単に「院長の思いつき」
のような気がしてしまうからです。

そうではなくて、

「新しい取り組みにチャレンジすることで、
医院をどのように変えていきたいのか?」

を明確に伝えていきましょう。

患者さんに歯周病の状態が
目で見て分かるツールを提供することで、
日頃のホームケアに役立ててもらいたい。

定期健診に来院する患者さんを
増やしていくことで、痛い思いをする
患者さんを減らしていきたい。

医院新聞を発行することで、
うちの医院を好きになってくれる
患者さんを増やしていけば、
日頃の診療がやりやすくなる。

こんな風に、新しい取り組みを
導入していくことで、
医院がどのように変化していくのかを
きちんと提示しておきましょう。

その際に、特に加えたい要素は、

患者さんに喜んでもらうため
スタッフの仕事をやりやすくするため

この2つの要素です。

人は、「自分のメリット」を感じないと
なかなか動いてくれません。

あなたは院長なので、「医院のメリット」が
そのまま自分のメリットになる立場です。

でも、スタッフは微妙に異なります。

スタッフが新しい取り組みに対して
メリットを感じてくれるように、
【目的】をていねいに伝えましょう。

◆取り組みのハードルを上げ過ぎない

新しい取り組みを導入する時には、
「まずできそうな簡単なところから」
と考えるほうがうまくいきます。

たとえば、運動の習慣を持つことを
考えてみてください。

いきなりハードなランニングや
きついウエイトトレーニングを
始めても、長続きしません。

そうではなくて、
まずは30分のウォーキングを
毎日行うようにしていく。

週に2回程度の
軽いウエイトトレーニングから
運動を習慣にしていく。

こんな風に、「ちょっと大変だけど、
何とかやり切ることができそう」
というレベルから始めるのがコツ。

医院での新しい取り組みでも、
簡単なことでは面白くありません。

かといって、手に負えないような
レベルの高いことを取り組んでも、
「難しい」「負担が大きい」という
イメージしか残らないものです。

経験の長いベテランスタッフや
小さなお子さんがいるスタッフは、
負担が大きすぎると感じることを
嫌がる傾向があります。

だって、現状のままでいても
特に困ることはないわけですから…

だから、ちょうど良い加減を
上手に見つけていくこと。

例えば、「補綴物の相談」という
プロセスを導入したいと
考えていくとしましょう。

いきなりスタッフに、「あなたが
補綴コンサルの担当になってね」
と指示しても難しいですよね。

でも、まずは「患者さんに
治療の選択肢を知ってもらう
ツールを渡そう」と考えたら、
かなりハードルが下がります。

ツールを渡せるようにするために、
「治療の選択肢がひと目で分かる
ツールを作ろう」と考えれば、
さらにハードルが下がります。

1)治療の選択肢のツールをつくる
2)つくったツールを配布する
3)ツールを使って説明する

こんな風に、ひとつひとつを
ステップにして取り組んでいけば、
必ずゴールにたどり着けます。

人は「自分の想像できること」しか、
積極的に取り組もうとしません。

チャレンジのハードルを上げ過ぎず、
スタッフが「これならできそう!」と
感じるポイントを見つけましょう。

◆変わり続けていく“意味”を伝える

人や組織が成長し続けていくためには、
「変化」を欠かすことができません。

今のままでいれば、今のまま。
そうならないように「変化をする」と、
新たな発展の余地が見つかるものです。

しかしながら、スタッフからすると

「今のままでも十分」
「今でも結構がんばっているし」
「大変な思いをしたくない」

と思うものです。

特に、ベテランスタッフや
小さなお子さんがいるスタッフほど、
そんな風に感じやすいもの。

ですから、
「変化し続けることの重要性」を
伝え続けていく必要があるのです。

例えば、次のようなことです。

・これからの医療業界、歯科業界は
どのように変化していくのか?

・あなたの歯科医院の現状と
その現状をどう変えていきたいのか?

・現状を変化させていくために、
スタッフの力が欠かせないこと

・変化させていくために、
具体的にどんなことをしたいのか?

・変化し続けていくことによって、
自分たちの仕事にどんなメリットが
生まれるのか?

つまり、現在の状態を変えていくことで、
「どんな明るい未来が待っているのか?」を
ていねいに伝えていくことです。

そして、変化というのは常に続きます。

ひとつの目標を乗り越えたら、
また新しい目標が生まれる。

だから、変わり続けていく意味というのは、
繰り返し何度も伝えていかなければならない
ものなのです。

◆下からの突き上げでベテランを変える?

ベテランスタッフの奮起を促したいと
相談された時に、

「若手の成長を促すことで、
ベテランを鼓舞する」

という方法を考えるかも知れません。

確かに、そういう方法論もあると思います。

昔のクラブ活動を思い出してみたら、
後輩にレギュラーを奪われたくない一心で
練習に打ち込んだ経験もありますし。

何らかの競争原理が働けば、
組織の活性化につながることも
考えられることは、否定しません。

ただ、私の経験則上で言えるのは、
歯科医院のスタッフ活性化に関しては、
若手からの突き上げは難しいです。

なぜなら、ベテランスタッフに対して、
若手のスタッフは遠慮するからです。

自分は頑張ってみようと思っても、
ベテランスタッフからSTOPが
かかれば、なかなか手を出せません。

ベテランスタッフに目をつけられて、
日頃の仕事がやりづらくなるのも嫌だ
と思っている若手も多いことでしょう。

そんなパワーバランスも考えたら、
若手からの突き上げは難しいわけです。

若手からの突き上げで鼓舞するのは、
どちらかというと男性的な社会で
うまくいく理論だと私は考えます。

営業成績を競い合うなどの競争があり、
明確な数字で評価されるような世界なら
若手の頑張りはベテランを刺激します。

でも、歯科医院はそういう社会では
ありませんよね?

女性同士が、お互いに敵を作らないように
いろいろ気を遣いながらバランスをとって
仕事をしています。

そういう組織の構造であれば、
ベテランスタッフを味方に付けて
若手を変えていくほうが簡単です。

効果も圧倒的に早く感じられます。

なので、ベテランスタッフに
積極的に協力してもらえるような
伝え方を考えていってください。

そのためには、

1)新しい取り組みの“目的”を伝える
2)取り組みのハードルを上げ過ぎない
3)変わり続けていく“意味”を伝える

この3つのポイントを押さえて、
「ていねいに」「繰り返し」という姿勢で
取り組んでいきましょう。