先日、クライアントの医院で
スタッフ個別コーチングの際に、
とても興味深い話を聞きました。

なぜ興味深い話だったかというと、
多くの先生たちが想像もしないような
患者さんの本音が分かるからです。

この話を聞いた時に、
「あぁ、もったいない…」という
気持ちになりました。

このもったいない話は、あなたの
歯科医院でも起こり得る話なので、
シェアしておきたいと思います。

◆カウンセリングしていますか?

あなたの歯科医院でも
「患者さんのお話を聴く時間」を
設けていますか?

初診の来院時に患者さんの話を
詳しく聴く時間を設けている
歯科医院が多くなってきました。

初診カウンセリングや
初診ヒヤリングなど呼び方は
さまざまですが、いずれも
「初診の患者さんに話を聴く」
という意味では同じことです。

話を聴くという行為の重要性は、
以前よりも増してきています。

その理由は、時代背景です。

コミュニケーションが
オンライン化してきて、
人間関係でさえもオンライン上で
形成できるようになってきました。

そんな人と人とのつながりの変化に、
人間関係の希薄さを感じる人たちが
少なからず存在しています。

また、さまざまなサービスも
どんどんオートメーション化
されてきています。

少子高齢化が進む日本社会において、
これはある意味では仕方のない流れ
と言えるかもしれません。

ただ、そんな無機質なやり取りに
淋しさを感じる人たちも
少なからず存在しています。

でも、そんな時代背景があるからこそ、

「私の話を聴いてほしい」
「もっと私のことを見てほしい」

そんな風に考えている人たちが
どんどん増えてきたということ。

ですから、「患者さんの話を聴くこと」を
今まで以上に重視していくことは、
この先の歯科医院経営で必須項目と
私は考えています。

◆話を聴くと分かること

初診時にヒヤリングをすることは、
時代背景で変化している患者さんの
ニーズに応えるためだけではありません。

実は、診療を進める上での
重要情報を知ることができることも、
大きなメリットになります。

なぜ、あなたの歯科医院を選んだのか?

あなたの歯科医院にどんなことを
期待しているのか?

過去の歯科治療でどんな経験をしたのか?

このようなことを聴いていくことで、
「その患者さんが求める期待値」を
知ることができます。

これさえ分かってしまえば、
あなたはその期待に応えるように
努力をしていけば良いのです。

せっかく初診ヒヤリングをしても、
主訴の話にしか興味がないという
先生も少なくないようです。

でも、それではただの問診と同じこと。

そもそも、カウンセリングというのは
「相談に乗って援助をすること」です。

援助するためのヒントを得るためには、
きちんとヒヤリングをすることが大前提。

せっかくヒヤリングをするのであれば、
患者さんの求めている理想に近づける
ヒントを見つけましょう。

◆当院へお越しになった理由は?

患者さんの期待値を知るために
効果的な質問は、「来院理由」を
聴くことでしょう。

理由があって来院するわけですから、
そこには満足させるヒント
必ず存在しています。

クライアントの歯科医院で、
少し突っ込んだ来院理由を
ヒヤリングしてくれている
スタッフがいます。

私との個別コーチング時に
そのトークと結果の報告として、
今回の話を教えてくれました。

大人の患者であれば、
生まれて初めて歯科医院を訪れた
という人は、ほとんどいません。

なので、自院への来院理由と共に、
「前に通っていた歯科医院は
ありますか?」と質問します。

ほとんどの人は「Yes」の回答ですが、
さらに突っ込んで質問します。

今回は、以前通院していた
歯医者さんに行こうとは
思わなかったのですね。

その理由は何かありますか?

さて、患者さんたちは
なぜ通っている歯科医院を変えようと
思ったのでしょう?

あなたは、それはどんな理由からだと
想像しますか?

◆治療に不満だったから…

こんなお話をしますと、多くの先生方が
「治療に不満があったから」と考えます。

もちろん、歯科治療を提供している以上、
治療内容に不満があったとすれば、それは
転院のキッカケになります。

なので、多くの先生方が患者の中断理由を
「不満」と考えるわけです。

これは、間違いではありません。

歯科治療のやり方や結果に不満があれば、
転院を選択するのはもっともな話です。

でも、本当にそれだけが理由なのか?

このスタッフが教えてくれた
初診時のヒヤリング結果によると、
実際には「不満」が全ての理由ではない
ということが分かりました。

では、治療に不満はない患者さんが
なぜ転院するのか?

あなたは、想像できますか?

◆日本人らしい話

不満もないのに転院する患者さんたち、
その理由はなんと!

気まずいから…

「治療の予約をしてたのだけど、
ついウッカリ忘れてしまって、
どうにもこうにも行きづらくて…」

「都合が悪くてキャンセルしたのだけど、
また自分から電話しますと言っておいて
何ヶ月も経ってしまったものだから、
なんだか気まずくて…」

このように、予約をキャンセルしたこと、
忘れてそのままになってしまったことを
気まずく思ってしまっていて、
それが理由となって転院してくる
患者さんというのが少なくないのです。

なんだか、とっても日本人らしい話ですね。

このブログを読んでくれているあなたは、
きっと「そんなこと気にしなくて良いのに…」
と思う心の優しいタイプだと思います。

世の中の歯科医院で「1回でも
無断キャンセルをしたら以後お断り」という
歯科医院のほうが、圧倒的に少ないはずです。

なのに、患者さんの立場になってみると、
こんなにも遠慮の気持ちがあるのです。

やはり「約束」をしていたわけですから、
それをすっぽかしてしまったことを
何とも思わない人のほうが少ない。

これは、予約時間に来なかった人に
電話をかけてみるとよく分かります。

多くの方が、
「忘れていました。すみません。」
と謝ってくれます。

患者さんのほとんどは、
忘れてしまったことを
気に病んでいるわけです。

◆フォローしておけば…

気まずい思いをしているだけで、
治療に対する不満は特になかった。

それなのに、患者さんは
転院するという選択をしている。

あなたからすれば、
「えっ?そんなことで?」と
思うかもしれません。

でも、これが患者さんの実態です。

その事実をよく理解しておかなければ
いけません。

では、患者さんが気まずい気持ちを
持たないように、歯科医院側から
フォローしてあげていれば、
どうだったでしょうか?

「先日のことは気にしないでください。
それよりも、きちんと最後まで治療を
することが大切ですよ。

あらためてご予約お取りしますが、
いつがよろしいですか?」

このようにアプローチしてあげたら、
転院することはなかったであろう
患者さんたちがたくさんいるのです。

こんなもったいない話はありません。

そんな風にならないように、
キャンセル患者のフォロー
予約未定者のフォロー
確実に行っていきましょう。

予約キャンセルの理由第1位、
それは「忘れていた」なので。

これは、キャンセル理由を調査すると
よく分かります。

ということは、「気まずい」が理由で
転院してしまう可能性がある人たちが
あなたの歯科医院にもいるということ。

キャンセル患者をフォローしていますか?

予約時間に来院していなければ、
患者さんに電話連絡をしましょう。

予約未定者をフォローしていますか?

次の予定が分からないと言われたまま
しばらく時間が経ってしまっている
患者さんにも、電話連絡しましょう。

医院側からアプローチすることが、
「気にしなくて良いですよ」を
表現することにつながるのですから。