先日、ある自営業者の奥さまと
お話する機会がありました。
その中で、とても印象的だったのが
このひとこと。
「時々、うちって単身赴任なのかな?って
思うことがあるんですよね…」
この奥さま、ご主人が頑張っているのは
十分わかっているので、ご主人の帰りが
遅くても、特に不満を言うことはない様子。
ただ、子どもを寝かしつけた後、
ひとりでボーっとしている時間があると、
ふとそんな風に思うそうです。
そして、お子さんがまだ3歳で、
まさにかわいくて仕方ない時期。
だからこそ、時々はパパにも子供の成長を
実感させてあげたいと思うとも。
それもそのはずで、聞いたところ
週休1日でお店をやっていて、
週1日の休日にも修行を兼ねた
アルバイトに行っている状態。
でも、「今頑張らないで、いつ頑張るんだ?」
というご主人の言葉はもっともだから、
それを不満に思うことはないと。
「だけど、これっていつまで
続くものなのでしょうか?」と
私は聞かれたのです。
このような状況で奥さまの立場になれば、
もう少し家庭とのバランスも考えて
仕事ができないものか?と考えるのも
無理はないかもしれません。
でも、自営業者である我々にとって、
仕事が軌道に乗ったと思えるところまでは
不安でいっぱいなもの…
だからこそ、家族のことは気になりつつ、
どうしても仕事優先の生活になってしまう…
これって「自営業者あるある」だと
私は思います。
そして、古くから作られてきた
日本型の価値観だなとも…
◆そんなに甘いものじゃない!
昭和堅気の社長さんなどに言わせれば、
「独立するというのはそういうものだ!」
「そんなに甘いものじゃない!」という
答えが返ってきそうな気がします。
成功を手にするためには、
家庭を省みることができない時期も
必要だと…
もちろん、開業したばかりの時期には、
それぐらい必死に働かなければならない
時期があるとは思います。
そういう時期も無ければ、
大きな成功を手にすることはできない
ということも決して否定はしません。
ただ、この奥さまが言っていた
「だけど、これっていつまで
続くものなのでしょうか?」
という言葉にこそ、本質的な問題が
現れているのではないでしょうか…
家族も、今が大変な時期だというのは、
十分に理解できているわけです。
ただ、この状態がいつまで続くのか?
という不安があるわけです。
ちなみに、私はこの奥さまに
「ご主人の『今頑張らないと!』という
言葉を初めて聞いたのはいつ頃ですか?」
という質問をしました。
なんと!!
もう4年ぐらい前のことだそうです…
その間にお子さんが生まれて、
ご夫婦の置かれている状況も
大きく変化しています。
ご主人としては、「子供が生まれたし、
もっと頑張らないと!」という気持ちで
それは必死に働いているのだと思います。
奥さまもそれが分かっているから、
毎日のように不満を言ったりはしない
のでしょう。
ただ、「今頑張らないと」の『今』って
一体いつまで続くんだろう?
家族がそんな風に思っても、
それは責められるものではない
と思います。
そして、この奥さまの言葉の中に
印象的な言葉がもうひとつありました。
「子供をいつまでも抱きしめられるものだと
思っていたら、大間違いなんですけどね…」
いかがでしょうか?
かなり真実を突いた言葉だと、私は思います。
今は3歳の子供でも、10年経ったら
中学生になります。
その頃に「子供を思いっきり抱きしめたい」
と考えたとしても、子供は抱きしめさせて
くれるでしょうか?
これから10年必死に頑張って、
少し時間が取れるようになったとしても、
もう子供のほうが相手にしてくれない
という可能性は十分に考えられます。
子供が3歳の時期は今しかないし、
もう二度と戻ってはきません。
仕事も大事かもしれませんが、
「3歳の子供と一緒に過ごす時間」も
一生の宝物と言えるはずです。
◆入学式も運動会も休んでしまえ!
実は、クライアントさんのサポートで、
よくある相談のひとつが、
お子さんの学校や幼稚園でのイベント。
入学式や運動会が診療日に開かれる場合、
医院を休診にするべきか否かを
相談されることは多いものです。
このような相談があった場合、私は
「1日ぐらい医院を休んだら良いのでは?」
と回答することがほとんどです。
なぜなら、お子さんの幼稚園の入園式は、
一生に一回しかないからです。
お子さんの幼稚園の年少さんの運動会も、
一生に一回しかありません。
お子さんの小学校の入学式も、
一生に一回しかありません。
じゃあ、医院の診療日は、
これから何日あるんでしょうか?
30年近く医院経営をしていくなら、
そのうちのたった1日です。
その1日で、生涯所得がそんなに大きく
変わるものなのでしょうか?
あなたのためだけに幼稚園が入園式を
もう1回やってくれるのであれば、
大したイベントではないかも知れません。
でも、それはありえない話。
このようなお子さんとの思い出は、
ひとつひとつがお金では買えない
プライスレスな価値のあるものです。
我々が育った昭和の価値観では
考えられないことかも知れませんが、
今は子供の入学式に有給を取る
サラリーマンが圧倒的に多いもの。
そういった時代背景も考えれば、
お子さんに「うちのパパはいない…」
という思いをさせて欲しくないと、
個人的に考えるところでもあります。
それに、三つ子の魂百までと言いますが、
お子さんが大人になってから「お父さんは、
入学式にも来てくれなかった…」なんて
言われるかもしれませんしね。
これは、男の子よりも女の子に
その傾向が強い感じがしますので、
娘さんがいる方は要注意です。
と、いろいろな意味で、私は
「お子さんとの時間や思い出は
大切にして欲しい」と考えています。
◆家族との時間もスケジュールに
入学式や運動会の例を挙げたのは
極端だったかもしれませんが、
医院経営を成功させていくために
ご家族との時間は大切にして欲しいと
私は考えます。
なぜなら、歯科医院経営が
うまくいっている人ほど、
ご家族との関係が良好だからです。
家族との関係を良好にすると言っても、
やることはとっても簡単です。
週に1~2時間程度で構わないので、
仕事のことを忘れて家族と向き合う時間を
確保することです。
「奥さまとランチに行く」とか、
「子供とキャッチボールをする」とか、
そういう時間を持つことです。
これをあなたのスケジュール帳に、
予定として書き込みましょう。
そして、その時間を過ごしている間だけは、
仕事のことを完全に忘れることです。
奥さんとランチをしている時間は、
奥さんの話を一生懸命聞いてあげること。
子供と一緒に遊んでいる時間は、
子供のしたいことに徹底的に
付き合ってあげること。
週に1回、1~2時間ずつで構わないので、
家族と向き合うことに集中する時間を
確保することが、家族との関係を良くします。
◆今という瞬間は「今」しかない
正直なところ、私もフルコミッションの
生保営業マンに転職したころというのは、
年間10日も休んだかどうかでした。
そして、その当時参加したセミナーの
先生から言われた「非常識な働き方」
「休むことがそんなに楽しいと思うのか?」
という話に陶酔し、
「休まないことが美徳」
「休暇を取るから成功できない」
そんな働き方をしていた時期が
10年近く続いていました。
でも、その結果として何が残っているのか?
仕事のスキルであったり、
信頼してくれるクライアントだったり、
それなりの収入だったり、
それなりに得られたものは
たくさんあります。
では、そのために捨ててきたものや
失ってしまったものもあったのでは?
と考えると、それもまた事実です。
何が正しいわけではありませんし、
それは個人の価値観によっても
大きく変わってくるはずです。
でも、たったひとつだけ言える
真実があるとしたら、
「時間は戻ってこない」
ということ。
人生は、たった一度しかありません。
もっとしたいことをして、
もっと楽しいことをして、
生きている喜びを感じる。
収入を得ることというのは、
自分がしたいことを実現するための
選択肢を増やすひとつのツールに
過ぎません。
お金を稼ぐ目的は何なのか?
ついお金を稼ぐことが目的に
なってしまいがちですが、
「人生の目的」を見失わないように
気をつけておきたいものです。