歯科医院の院長という仕事において、
あなたにとって、最も難しい業務は
何でしょうか?

患者とのコミュニケーション?
日々の治療?
スタッフ教育?
新患の獲得?

そのポイントは人それぞれだと
思います。

得意なことや好きなことが
人それぞれあるように、
難しいことや苦手なことも
人それぞれで当然です。

では、あなたの歯科医院の
スタッフにとって、
最も難しい仕事は何でしょうか?

患者さんとのコミュニケーション?
日々の処置やアシスト?
接遇?

これもまた人それぞれだと思います。

一方で、私が過去にサポートした事例で、
多くの院長とスタッフが共につまずく
意外なポイントがあります。

◆できてしまっているからこそ…

そのポイントとは、「初心者の教育」です。

これは、未経験者のアシスタントに
仕事を教えるということだけでは
ありません。

リーダー教育も然り。
カウンセリングのやり方も然り。
事務処理のやり方も然り。

初めてその業務を担当するスタッフに、
慣れているベテランスタッフが教える
全ての場面で、意外と苦労します。

あるいは、院長の権限委譲。

あなた自身が担当していた業務を
スタッフに棚卸するという場合にも、
意外と苦労する方が多いものです。

長年一緒に働いてきたスタッフなのに、
「今まで俺の仕事を見てなかったの?」と
苛立った経験、あなたにもありませんか?

◆分からないことが、分からない…

自分の担当する業務に精通している
ベテランスタッフであっても、
うまく教えられないのはなぜなのか?

それは、
分からないことが、分からない…
という問題に尽きるでしょう。

今は業務に精通している担当者も、
初めは初心者でした。

でも、何度もその業務をこなすうちに、
担当する業務に精通してきます。

すると、朝起きて歯をみがくのと
同じように、自分の中で考えなくても
できる業務に変わっていきます。

「できるのが当たり前」で、
「できることが普通」という状態に
スタッフも成長していくわけです。

これは、担当スタッフのスキルが
上がっている証拠なのですから、
とても良いことです。

ただ、院長という立場で
スタッフを評価していくとすれば、
業務をこなせるだけでは困ります。

業務をこなすレベルが上がれば、
次は「人に教える」という立場に
成長してもらいたいと考えるはず。

そういうことが増えていけば、
【リーダー職】【チーフ職】という立場も
任せていくことができます。

やはり、ある程度のキャリアを積んだら、
次は「後輩を育成するポジション」に
成長して欲しいのが本音でしょう。

ところが、いざ後輩指導の立場になると、
どう教えていったら良いのか分からずに
固まってしまうスタッフが実に多いもの。

その原因こそ、ベテランスタッフには
できることが当たり前になり過ぎていて、
「分からないことが分からない」から。

つまり、「初めてその仕事をした時には
いったい何につまずいたのか?」が
分からなくなってしまっているのです。

◆指導する側とされる側のギャップ

指導する立場のスタッフに話を聞くと、
「覚えが悪い」「メモを取らない」など、
指導を受ける側の不満を耳にすることも
少なくありません。

一方で、指導される側のスタッフに
話を聞いてみると、

「もっと分かりやすく教えて欲しい」
「もっと丁寧に教えて欲しい」

というような話が多いものです。

つまり、指導する側と指導される側に、
大きなギャップがあるということ。

教えるほうは丁寧に指導しているつもりが、
教えられているほうは「分かりづらい」と
感じてしまっている状態です。

でも、これぐらいの状態であれば、
まだ良いほうかもしれません。

実際には、次のような問題が起こっている
ケースというのが、少なくありません。

教えたほうは、「教えたことをまったく
覚えてくれない」と悩む。

一方で、教えられている側は、
「指導担当者に『教えた』と言われたが、
教えられた業務ではない」と戸惑う。

この『言った、言わないのトラブル』は、
あなたの歯科医院でも経験があるのでは?

これは、対処がとても難しい
トラブルでもあります。

なぜなら、指導している場面を
あなたが直接見たわけではないために、
どちらが正しいのか分からないから。

あるいは、指導担当者が
教えているのかも知れないけど、
何もその証拠は残っていないから。

このように、客観的に評価できる材料が
何も無いため、どちらの肩を持つわけにも
いかない問題だから、難しいわけです。

◆「教育ステップ表」を作ろう!

指導する側と指導される側のスタッフで
教育に関するトラブルが起こるのは、
前述の2つの原因が考えられます。

1)初心者の気持ちが分からない
2)教えたことの記録が残っていない

この2つの問題を解決するために
お勧めしたいのが「教育ステップ表」

作り方は、とっても簡単です。

まずは、指導する側のスタッフが
教えていく業務の内容を
ひとつひとつのステップにします。

例えば、治療のアシスタント業務。

慣れてしまっている人には、
「アシスタント業務」と
ひと言で済ませられる話です。

でも、治療のアシスタントと言っても、
いろいろな業務が積み重なって、
「アシスタント業務」になります。

・処置内容や治療が進む手順の説明
・治療に必要な器具の準備
・治療で使う材料の準備
・手順に合わせて渡す道具
・治療が終わった後の片付け

これらの要素について
きちんと理解できていないと、
アシスタント業務はできません。

そしてもうひとつ、「1人で業務が
こなせるようになるためのステップ」も
考えておかなければなりません。

・説明をする
・先輩スタッフがやって見せる
・先輩スタッフの管理下で実践
・1人で実践してみる

これらの要素をひとつにまとめたのが、
私の言う「ステップ表」です。

具体的には、次のようなものを
作ってみると良いでしょう。

教育ステップ表

このような表にしておくことで、
教えるべき内容の整理ができて、
覚える内容も明確になります。

また、教えた日付を記録することで、
言った言わないというトラブルも
防止することができます。

「マニュアル」は、
それぞれのステップについて
細かく書かれた手順書。

「ステップ表」は、
教える内容のカリキュラム化という
位置づけになります。

マニュアルを開けば業務をこなせる
レベルのマニュアルが整備できるのが、
理想的だとは思います。

しかしながら、そんなマニュアルが
出来上がるまでには、かなりの時間と
労力が必要になってしまいます。

実際に、業務をマニュアルだけで
教えられるケースのほうが少ないはず。

なので、まずは教える負担も加味した
「教育ステップ表」のほうが、
早く準備することができるはずです。

さらに言えば、このステップ表を
バックヤードに貼りだしておくことを
お勧めします。

そうすれば、指導担当者以外の人でも、
新人スタッフは何ができて、
何ができないのか、ひと目で分かります。

新人スタッフでもできることは
どんどん任せることができるので、
全体の業務も効率化します。

ほんのちょっとの工夫で、
医院全体でも共有できることを
増やすことができます。

「教育ステップ表」の作成に、
ぜひ取り組んでみてください。