どんなスタッフであっても、
たとえ新人スタッフであっても、
一定レベルの業務ができるように
と考える先生が多いと思います。

私も「再現性のある仕組みづくり」を
推奨していますが、その考え方の基本は
誰でも一定レベルの業務ができる
ということに他なりません。

昨日入社してきた新人スタッフでも、
3ヶ月後には第一線級のベテランと
同じような業務ができる状態。

こんな風になっていけば、
医院運営がより盤石になることは
あなたも容易に想像ができるはず。

そのために必要なものといえば、
『マニュアル』なわけですが…

◆ マニュアルがあっても作り方の相談…

このマニュアルのお話、
多くの先生方から相談されることの
ひとつです。

そんな相談をされたときに、
私が必ず先生にする質問があります。

それは、

何のためのマニュアルを
作りたいのですか?

ということ。

これまでご相談を受けた歯科医院には、
実際にマニュアルをきちんと作成している
歯科医院がたくさんありました。

にもかかわらず、
「どんなマニュアルを作れば良いですか?」
と質問を受けます。

マニュアルを持っている歯科医院からも、
マニュアルの作り方を相談される
ということです。

すでにマニュアルを持っているのに、
マニュアル作りの相談をするって、
おかしいと思いませんか?

少なくとも、私はマニュアルがあるのに、
マニュアル作りの相談をするというのは
不思議に思います。

でも、そういう相談がある以上、
そこにはそれなりの理由があるはず。

マニュアルを所持している歯科医院が、
マニュアル作りの相談をする理由。

あなたは、なぜだと思いますか?

◆ マニュアルは何のために?

こういう相談が発生する理由は、
至極単純です。

それは、【マニュアルを作る目的】が
明確になっていないから。

マニュアルを作ること自体が
目的となってしまっていて、
マニュアルが完成した後の姿が
全くイメージできてない状態で
マニュアルを作るからです。

この記事を読んでいるあなたも、
きっと自医院のマニュアルを作りたい
と思っていることでしょう。

では、そのマニュアルの目的は、
どのようなものでしょうか?

明確になっていますか?

私はマニュアルの存在意義を
【業務を簡単にすること】と
考えています。

ここでいう【簡単】というのは、
「easy」という意味ではありません。

簡単とは、「simple」を指します。

つまり、今日入職した新人でも、
マニュアルを見れば一定レベルの
業務をこなせるぐらいに、
業務をシンプルに分解したもの。

そういう状態になっているものが、
本当の意味のマニュアルです。

でも、マニュアルを持っている
歯科医院において、マニュアルが
どんな扱いを受けているのか…

ほとんどの場合、医院の書庫に
厳重に保管されていて、
一切開かれることはありません。

ひどいケースになると、
マニュアルが存在していること自体、
忘れられていることさえあります…

せっかく苦労して作ったのに、
どうしてそんなことに
なってしまうのでしょうか?

◆ マニュアルとは?

そうなってしまう理由は、ただひとつ。

「マニュアルとは?」という
言葉の定義が決まっていないからです。

マニュアルとはどんなものかを
きちんと決めることなく、
マニュアルを作ることを目的にするから、
使われないマニュアルが出来上がる。

ただ、それだけのことです。

ということは、
【使えるマニュアル】というものを
院長先生が定義しなければなりません。

医院の書庫にしまわれていて、
存在さえも忘れられてしまうものでも
マニュアルさえあれば良い。

そう考えるのであれば、
そのようなマニュアルを作るのを
私は悪いことだとは思いません。

でも、本来マニュアルというのは、
そういうものなのでしょうか?

「業務で困ったときに、
マニュアルを見れば解決できる」

「先輩スタッフが忙しくしていて
質問することができないとしても、
マニュアルを見れば何とかなる」

そういうものをマニュアルと
呼ぶのではないでしょうか?

◆ マニュアルのイメージ

本来、現場で使えるマニュアルを
作成したいはずなのに、なぜか
書庫にしまわれるマニュアルが
出来上がってしまうという現実…

そうなってしまうのは、
私たちの脳内にある
【マニュアルという言葉】に
問題があります。

つまり、これまでに
あなたが出会ってきた
マニュアルというのは
どのようなものだったのか?
ということです。

例えば、家電製品の取扱説明書。

これも、マニュアルの一種です。

メーカーが一生懸命作ってくれた
製品マニュアルですが、隅から隅まで
きちんと読んだことはありますか?

あるいは、日常業務でよく使う
レセコンの利用マニュアル。

レセコンの操作に困ったときに、
あなたは読んでいますか?

おそらく、コールセンターに電話して、
操作方法を聞いたほうが早いという
結論に至る方がほとんどでしょう。

分厚い冊子のようなマニュアルを開いて、
いちいち索引を調べているぐらいなら、
電話して聞いたほうが早い。

そうです。世の中にあるマニュアルの
ほとんどがそういう類のものなのです。

だから、自医院でマニュアルを
作成しようと考えた時に、
そういう【使えないマニュアル】が
できあがってしまうのです。

「マニュアルを作っていないから
スタッフが育たないんだ!」という
先生がたくさんいらっしゃいます。

では、「スタッフが育つマニュアル」って

どのようなものなのでしょうか?

その定義をきちんと決めて、
マニュアル作成に臨んでいますか?

◆ マニュアルのマニュアルを作る

もしあなたが【使えるマニュアル】を
作りたいのであれば、まずは
【使えるマニュアル】がどんなものか、
きちんと定義しておきましょう

つまり、
【マニュアル作りのマニュアル】が
マニュアル作りの第一歩です。

・マニュアルの目標は?
・マニュアルの目的は?
・マニュアルの記載事項は?
・マニュアルのフォーマットは?
・マニュアルのデータ形式は?
・マニュアルの更新時期は?
・マニュアルで得られる成果の基準は?
・マニュアルの作成担当者は?
・マニュアルの更新履歴の保存方法は?

ここに挙げた項目でも、
マニュアル作りのマニュアルの
ほんの一部に過ぎません。

マニュアル作りというのは、
そのぐらい難しい作業です。

「他医院のマニュアルを見せて欲しい」
「事例を見せてもらえないか?」
「テンプレートを提供してほしい」

そんな風に言われることが多いのですが、
これはハッキリ言って不可能です。

なぜなら、マニュアルを作る目的、
マニュアルを作って得たい成果は、
医院ごとに異なるからです。

そのぐらい、マニュアル作りの
マニュアルを作ることというのは、
マニュアルの成果を左右します。

ただマニュアルがあれば、
業務が良くなるわけではありません。

【現場で使えるマニュアル】があって、
初めて業務が改善していきます。

もっと、言葉の定義について
敏感になるべきではありませんか?

◆ あいまい言葉の明確化

マニュアル作りを例に出しましたが、
あらゆる業務において【言葉の定義】を
明確にする必要があります。

なぜなら、院長であるあなたと
スタッフとの間では、
言葉のイメージが異なるからです。

これはスタッフだけでなく、
対患者さんでも同じことが言えます。

あなたが言っている〇〇という言葉、
スタッフがあなたとまったく同じように
〇〇と解釈するとは限りません。

あいまい言葉をあいまいにしておくから、
お互いのイメージに誤解が生まれます。

あなたもスタッフの言動に対して、
イライラすることが増えます。

スタッフも院長の言っていることが
分からないという不信感が生まれます。

そして、その小さな誤解が積み重なり、
スタッフとの溝が大きくなります。

あいまい言葉が生み出す負の効果は、
想像以上に大きいものです。

あなたが何気なく使っているその言葉、
スタッフも全く同じように考えて、
行動できていますか?

【あいまい言葉の明確化】

日頃の業務において、
意識してみてください。