単刀直入にお聴きします。
あなたは、【褒める】という行為は
お得意でしょうか?
スタッフ教育の勉強をしていると、
【褒めて育てる】ということが
キーワードのように語られています。
確かに、褒められて嫌な気分になる
という人は、いないことでしょう。
褒められれば、テンションが上がる
という人がほとんどです。
褒められてモチベーションが上がる
という人も多いはずです。
だからと言って、
褒めるポイントを探し続けるのは、
褒めるほうも疲れてしまいますよね…
どうすれば、【褒め上手】に
なることができるのでしょうか?
◆営業は褒めることから?
私が生命保険会社に勤務する
営業マンだったころ、
先輩社員から教えられたのは、
【まず、相手を褒めろ!】
ということでした。
会社訪問をしたら、
社長が喜びそうなポイントを
瞬時に見つけて褒めろ。
お客様の心をくすぐるような
褒めるポイントを見つけろ。
営業マンとして、
それが大事なことだと
教えられました。
でも、褒めるという行為は、
とても難しいものです。
保険マンとして成功したい一心で、
一生懸命「褒める練習」をしました。
「褒める練習」のために、
1日に何百件も飛び込み営業を
行いました。
その結果、私が行きついたのは、
【褒め方が分からない】という
結論でした。
どういうことかというと、
褒めようとすればするほど、
ぎこちない褒め方になるのです。
無理矢理でも褒めるポイントを
一生懸命探すものだから、
言葉遣いもおかしくなります。
そもそも、相手が褒めて欲しい
ポイントとずれることなんて
日常茶飯事でした。
私は一生懸命褒めているつもりなのに、
相手はキョトンとしている。
いくら営業の基本だからと言われても、
これでは、お客様の心をつかむことなど
できるはずがありません。
こんなぎこちない褒め方になった理由は、
何だと思いますか?
それは、「お世辞と褒めることの違い」が
分かっていなかったからです。
◆お世辞と褒めることの違い
あなたも今までに
「お世辞は言えない」という人に
出会ったことはありませんか?
お世辞を言われて良い気分になる人は、
そう多くないと思います。
一方で、褒められて悪い気分になる人も、
そう多くないと思います。
【お世辞】と【褒める】
この2つの言葉、
同じようなことを表現していますが、
いったい何が違うのでしょうか?
私が保険マンとして
生きるには困らない程度の契約を
確保できるようになって、
気づいたことがあります。
【褒める】という行為は、
相手の長所や成果などを
素直に認めることです。
つまり、「素晴らしい」と
心から感じたことについて、
褒める言葉が生まれます。
だからこそ、褒めるポイントを
見逃すことはありません。
そして、心から感じたことを
素直に褒めているから、
相手の心に響きます。
一方で、【お世辞】というのは、
どのようなものでしょうか?
お世辞には、事実に基づいた
根拠がありません。
褒めるポイントを見つけるために、
無理矢理褒めている状態というのが
【お世辞】と言えるでしょう。
それは、心から素晴らしいと
感じたものではありませんし、
共感できるようなものでもありません。
だから、言われた相手のほうも
心がこもっていないと感じますし、
言うほうも白々しくなります。
言われたほうも言ったほうも、
お互いに後味の悪い気持ちになるのが
お世辞と言えるでしょう。
心から感じたものについて褒めるから、
相手の心に響きます。
それなのに、【褒めることが人の才能を
伸ばすことだ】という理屈というのは、
かなり矛盾している気がします。
スタッフ教育、コーチングで言われる
【褒める】という行為は、お世辞でも
効果を生むものなのでしょうか?
そうではありませんよね。
お世辞を言われて気持ち良くなる人は、
世の中にそう多くないはずです。
【褒める】と【お世辞】
とてもよく似ていますが、
根底にある感情というのは、
大きく異なるものです。
これを認識して使わないと、
スタッフからの信頼を失うことにも
なりかねません。
◆なぜ、褒めるのは難しいのか?
私たちの心の構造というのは、
とても複雑です。
良いものを素直に褒められるという
美しい心を持っているのは確かです。
その反面、相手の短所やミスばかりが
目についてしまうという、弱い心も
持ち合わせています。
と言いますか、相手の悪い部分のほうが
目立って見えたりするものですよね。
「いいな」と心から思ったことしか
褒めることができないということが、
私たちの本当の姿です。
褒めることが上手な人というのは、
相手の長所や美点を発見することが
上手な人とも言えます。
つまり、アンテナを張ることよりも、
自分の心を律することができる人が
褒め上手な人と言えるでしょう。
また、日本的な教育の価値観にも、
大いに問題があると私は考えます。
「出る杭は打たれる」
「能ある鷹は爪を隠す」
こういう日本の伝統がありますので、
私たちは自然と「調子に乗るな!」と
押さえつけられながら育ってきました。
そのため、人から褒められた嬉しさを
実感する経験に乏しいのです。
それゆえに、相手を心から褒めた時の
気持ち良さの経験も少ないものです。
そのため、褒め方が分からないし、
褒めることに自信が持てないのです。
つまり、人を褒めるという行為に対して、
トレーニングを受けていないわけです。
褒めるためには、相手の長所や美点を
意識的に見つける必要があります。
しかしながら、とても残念なことに、
私たちはそういう訓練を受けていません。
だから、褒めることや褒める言葉に
妙なぎこちなさが生まれるのです。
◆褒めるポイントを見つけておこう!
今日、私がお伝えしたいことは、
「我々は、褒めることが苦手である」
ということを自覚することです。
それを自覚することができれば、
自然と褒め方にも工夫が生まれるはず。
例えば、褒めるポイントです。
つい「成果」を褒めることに
フォーカスし過ぎてしましますが、
実は「過程」を褒めることもできます。
成果を挙げる過程では、
「努力」もしているはず。
このように考えていけば、
褒めることができるポイントは
たくさん存在しています。
にもかかわらず、私たちはつい
「成果」に目を向けてしまいます。
それゆえに、報われる正しい努力しか、
素直に褒めることができないのです。
少し考え方を変えて、
「過程」や「努力」まで考慮したら、
褒めるポイントは見つかりませんか?
失敗してしまったときに、
「今回の結果は良いものではなかったかも
しれないけど、その分努力していたことは、
みんなが分かっているよ。
次の機会では、この失敗を挽回できるように
がんばってみよう!」
と言われたらどうでしょうか?
仮に結果がともなわなかったとしても、
努力や成長を認めてあげれば、
モチベーションも上がります。
逆に、結果だけを見て
「ダメじゃないか」「やる気はあるのか」と
問い詰められたらいかがでしょう?
このように、視点を変えてみれば、
褒めることができるポイントは
少なくないことでしょう。
◆自己承認欲求を満たす
私たちは、なぜ褒められると
嬉しいのでしょうか?
それは、「自分が認められた」という
感覚になれるからです。
例えば、「ありがとう」という
言葉ひとつでもそうです。
こういうねぎらいの言葉って、
あなたも嬉しくありませんか?
スタッフがしてくれていることを
決して当たり前とは考えずに、
「ありがとう」と伝えてみましょう。
自分が本当に助かったと思ったら、
素直に「ありがとう」を
表現するようにしましょう。
スタッフというのは、
意外と先生からこの「ありがとう」
という言葉を聴けないことに
不満を覚えているものです。
自分が目標に向かって努力したのに、
院長がそれを分かっているのかさえ
分からないような状態。
院長に、やってさも当たり前
という態度で接されている。
とりあえず「ありがとう」を
言えば良いやという態度が
見え隠れするような状態。
このような状態だとしたら、
スタッフは褒められたという
気分になるでしょうか?
褒めるという行為は、
本来「感謝」や「ねぎらい」を
表現するために使われます。
つまり、心の奥底から
感謝やねぎらいの言葉をかけないと、
スタッフには伝わりません。
褒めるという行為にフォーカスして、
褒めることを考えてみたところで、
良い褒め方は見つかりません。
そうではなく、自分が心から
「助かった」「ありがとう」と
感じたことを表現するべきです。
褒めようとして褒めたポイントは、
褒められたほうが褒められているように
感じないケースが少なくないということ。
もし、あなたがスタッフを褒めるポイントに
お悩みであるとしたら、お世辞と褒めるの
違いを明確にしておきましょう。
そして、無理に褒めるポイントを
探すようなものでもありません。
自分が「素晴らしい」「助かった」と
思うポイントを素直に表現したほうが、
褒められたほうも喜びます。
【褒めて伸ばす】という方針は、
決して間違いではありません。
ただ、相手が「褒められている」と
感じられるような褒め方をしましょう
ということ。
無理矢理でも褒めるポイントを見つけて、
ぎこちない言葉で褒められるよりも、
素直に良いと思ったときには褒めましょう。
あなたが「良いな」と感じられた時には、
良いと感じたポイントをきちんと相手に
伝えるようにしたいものです。