あなたの歯科医院には、
スタッフ向けの業務マニュアルは
存在していますか?

業務マニュアルは、
スタッフの初期教育のために、
とても便利なツールです。

未経験者のスタッフであれば、
歯科の基礎的な知識を与えるために
大いに活躍するものでしょう。

仮に経験があるスタッフでも、
あなたの歯科医院のやり方や考え方を
教えていく必要がありますので、
マニュアルが整備されていると
初期教育が円滑に進められます。

ですから、業務マニュアルの整備は、
あなたの歯科医院にもお勧めしたい
取り組みです。

ただ、マニュアル作成においては、
必ず考えておかなければならない
重要なポイントがあります。

それは、
【使える】マニュアルになっているか?
ということ。

あなたの歯科医院にあるマニュアルは、
日頃の業務で使えるマニュアルに
なっていますか?

◆ なぜマニュアルが必要なのか?

ところで、なぜマニュアルを準備するのか、
その目的はハッキリしているでしょうか?

使えるマニュアルが作成できるかどうかは、
実はこの【マニュアルの目的】をどこにおくか?
にかかっています。

あなたは、マニュアルというと、
どのようなものをイメージしていますか?

・日常業務の手順が細かく書かれているもの
・マニュアルを見て業務のやり方を学ぶもの
・すべての業務について網羅された分厚い冊子
・医院の書庫に並べてあるもの

多くの先生方がこのようなイメージを
持っているのですが、あなたはいかがですか?

業務の手順を覚えるためのツールなので、
上記のようなイメージで作ったマニュアルが
間違っているわけではありません。

ただ、【日常業務で使えるか?】という
観点で見た時にどうなのか。
それを考えてみて欲しいのです。

例えば、医院の書庫にマニュアルが
並べてある場合を考えてみましょう。

治療のアシストに付いている時に、
この治療で何を準備したら良いのかが
分からなくなってしまった。

そんな時に活躍するのが、
本来のマニュアルの役割ですよね。

さて、目の前に患者さんがいて、
あなたから指示を受けた新人スタッフ。

準備するべき材料や器具が
分からなくなってしまったので、
書庫にマニュアルを取りに行った。

そして、該当するページを探して、
準備物を探し当ててきた。

そうして戻ってきたときには、
いったい何分ぐらい経過しますか?

日頃の診療の現場でこんな対応をされたら、
きっと予定が滞ってしまうはずです。

そして、そんな状況を目の前にして、
あなたは「どれだけ待たせるんだ!」と
めちゃめちゃイライラするはずです。

せっかく、きちんとしたマニュアルが
整備されているにも関わらず、これでは
何の意味もありませんよね…

現場で使えるマニュアルというのは、
【分からなくなった時にそれを見れば
すぐに対応できるもの】を目指さないと
使えるマニュアルにはならないのです。

◆ マニュアルに対する思い込み

このように、マニュアルの目的が
不明確なままマニュアルを作成している
ケースは少なくありません。

特に、スタッフからのリクエストで
スタッフが作成するマニュアルというのは、
そうなりがちな印象があります。

なぜなら、スタッフにとってのマニュアルは
「業務を覚えるため」に存在してるからです。

自分が教える手間を省けるようにとか、
教えた仕事を復習できるようにとか、
休み時間でも勉強できるようにとか、
そんな目的で作成することが少なくありません。

でも、マニュアルの本当の目的は
どのようなことでしょうか?

そうです。
もうお分かりですよね。

【困った時に、見れば問題可決できること】が
マニュアルの本当の目的です。

業務内容を教えるとか、復習とか、
それはマニュアルの補助的な目的に
過ぎません。

本質的な目的は、「みんな手がいっぱいで
先輩に聞くこともできないような場面でも、
見れば業務を何とかこなすことができる
状態をつくること」にあります。

マニュアルという言葉のイメージなのか、
どうしても知識欲を満たすための
マニュアルが作成されがちです。

確かに、レセコンの使用マニュアルとかを
見てみると、そんな風にできているので、
そこに寄ってしまうのかも知れません。

でも、考えてみてください。

レセコンの使用マニュアルだって、
すべてのページをみるわけでは
ありませんよね。

おそらく、最も基礎的な使い方を
インストラクターさんに教えてもらい、
機能の検索をするときなどに
あらためて開くものではありませんか?

もしかすると、分からないことがあれば
サポートデスクに電話をかければ良いので
マニュアルを開いたことはないという
歯科医院も多いことでしょう。

このような状態を正確に表現すると、
マニュアルではなく、レセコンの説明書
と呼ぶべきなんです。

でも、人間は自分の体験から考える
クセを持っています。

だから、「マニュアル=業務説明書」に
なってしまいがちなのです。

◆ 使えるマニュアルにするために

マニュアルは業務説明書ではないので、
【困った時の虎の巻】として使える
マニュアル作りを考えましょう。

そのようなマニュアルを作りたいなら、
ひとつ大事な心構えがあります。

それは、【完璧主義を捨てる】ということ。

マニュアルが説明書になってしまうのには、
「完璧なものを追求するから」という理由も
あります。

こういうパターンではこう。
ああいうパターンもあった。
これも付け加えておこう。

こんな風に、さまざまな状況に応じて
どんな時でも利用できるものを目指すから、
中身がどんどん膨らんでしまうのです。

そのような説明書があっても良いのですが、
結局のところ、レセコンのマニュアルと
同じことになっていきます。

どこに何が書いてあるのか分からなくて、
誰も開かない、書庫の肥やしになっている
パターンです。

本来、マニュアルというものは、

「分からないことがあるけれども
周りも忙しくしている状況のために
先輩に聞くこともできない。

そんなどうしようもなく困った場面でも、
目の前にあるマニュアルを見ることによって、
その場をなんとかしのぐことができるもの」

であれば十分ではありませんか?

つまり、完璧主義を捨てれば良いのです。

「60点で良い。
残りの40あとは、周りにいる人でも
フォローできるのだから。」

そういう発想で考えることです。

治療のアシストに新人スタッフがついて、
仮に100%できなかったとしても、
それはあなたがフォローできますよね?

多くのスタッフがそうであるように、
未経験の新人スタッフであっても
6ケ月も勤務すれば、ひと通りの
基本的な業務はできるようになります。

まず60点のことをできるようになれば、
あとは100点まで精度を上げていくだけ。
その40点の差は経験が埋めるもの。

だから、最低限のことをできるような
マニュアルが整備されていれば、
日常業務としては十分なのです。

言い換えると、
【最低限の基準が必要な業務】は
どんどんマニュアルにすべきです。

例えば、医院の美化や清掃です。

どこをどんな風に掃除するのか?
キレイというのはどんな状態か?
午前の診療後に何をする必要があるのか?

こういうことは、マニュアルを使って
ルーティン化していくのがベストです。

ここでも【使えるマニュアル】という
意識を忘れずに。

目で見て誰でもわかるようなマニュアルを
目指すのであれば、【チェックリスト形式】
お勧めです。

完了した業務にチェックを入れていくことで、
何をやってあって、何をしていないのかが
すぐに分かるからです。

完璧主義を捨てたマニュアルにすると、
60点思考でマニュアルを作成すると、
仕事のストレスが減ります。

なぜなら、相手(新人スタッフ)に対する
期待値が低くなるからです。

ストレスを感じる要素を減らすためにも、
【完璧主義を捨てた60点思考で作成する
マニュアル】を整備してみましょう。