以前と比べて求人が難しくなってきたと
感じている先生は多いと思います。

では、人手不足に悩んでいるのは、
歯科業界だけなのでしょうか?

実は、そうでもありません。

参考にこちらの記事を
ご覧になってみてください。

「人手不足な職業・人余りな職業」ランキング

これを見ると、医療業界よりも
さらに厳しい状況にあるのは
建設業ということが分かります。

意外なのは、営業マンも採用が
困難な職種になりつつあるということ。

私が就職活動をしていた頃は、
営業マンは応募をしてもなかなか内定を
もらうことはできない職種でした。

ところが最近はそれも逆転してきて
いるようで、「売り手市場」というのも
納得できる気がします。

さらに、次の記事を見てみると、
中小企業の苦戦ぶりというのも
よく分かります。

中小の採用難深刻に 求人倍率9.91倍で過去最高

実は、求人に苦戦しているのは
中小企業全般に言えること。

こういった世の中の流れを見ると、
あらゆる職種で採用が困難になりつつある
と考えたほうが妥当でしょう。

そして、こういう時代だからこそ、
真剣に考えなければならないことがある
と私は考えています。

◆前に戻っただけ

では、歯科業界はいつでも
人手不足だったのでしょうか?

実際には、そうでもない時期が
あったはずです。

リーマンショックが起こった頃、
歯科の求人に未経験者が大量に応募する
という時期がありましたよね。

未経験OKのアシスタント求人に
100件以上の応募があることも
珍しくなかったはずです。

当時は「派遣切り」なんて言葉が
生まれたような状態で、他業種の
求人が極端に減りました。

そのタイミングで職を失った人たちが、
慢性的に人手不足だった医療業界に
応募が殺到したという背景があります。

さらに、医療業界は景気に左右されず
安定的というイメージもあるので、
人材が流入したのも要因でしょう。

では、リーマンショックが起こる前は
どうだったでしょうか?

やはり、求人に苦戦していたはずです。

当時は、アシスタントの求人に
苦戦している先生方から
たくさんの相談を受けたものです。

ところが、リーマンショック発生後は
歯科衛生士の求人についての相談ばかりで、
アシスタントの求人に関しては
ほとんど相談されなくなりました。

今までものすごく求人に苦戦していたのに、
それが求人を出せば応募が集まる状態へと
好転したわけですから、採用できないと
相談する必要はないわけです。

そう考えてみれば、今の状況というのは
リーマンショックの前に戻っただけとも
言えるのでは?

◆あの頃に採用したスタッフたちは…

求人が活況だった頃があるということは、
当時にそれなりの数のスタッフたちが
医療業界に流入したはずです。

では、今から10年ぐらい前のあの頃に
歯科業界で働き始めたスタッフたちは、
今どうしているのでしょう?

どのぐらいのスタッフたちが、
医療業界に定着しているでしょうか?

歯科医院という特性を考えると、
結婚を機に退職をしていったスタッフも
比較的多いとは思います。

一方で、医療機関に馴染めずに
退職していってしまったスタッフも
それなりの数で存在するのでは?

このような時代背景の話を持ち出したのは、
求人で苦戦している現在の状況について、
少し見方を変えてほしいからです。

見方や考え方を変えて見れば、
景気が悪くなった当時に
医療機関に興味を持ったスタッフが
少しでも定着していてくれたら、
今の状況はどうだったのでしょうか?

今のような状況は、もう少し
緩和されていたのでは?と考えるのは
私だけではないと思います。

◆少数精鋭の難しさ

私は採用に関する相談をされることも
多い立場にあります。

これまでにたくさんの履歴書を見てきて、
ひとつの傾向として感じていることは、
中小企業ほど短期間で退職した経験のある
求職者が多いということです。

医療機関に限らず、中小企業の職歴に
短期間での転職歴を持つ人が少なくない。

医療機関もほとんどが中小企業なので、
同様の傾向が見られるはずです。

経験者であっても最初に勤務した医院を
1年以内に辞めているスタッフって、
結構な数で存在していませんか?

だけど、2軒目に勤務した医院では
それなりの期間勤務して業界に定着した
スタッフって、意外と多くありませんか?

実際のところ、あなたにも
採用したスタッフが短期間のうちに
辞めてしまった経験があると思います。

そういうスタッフに限って、
あなたも扱いづらいな…なんて
思っていたりして、辞めたところで
そう大きな痛手を感じなかったのでは?

あるいは、あなたはOKだったけど、
同僚スタッフがあまり良い顔をせず
医院の雰囲気が乱れてしまうから…と
思うような人だったかもしれません。

これが、少数精鋭で事業を運営する
中小企業の難しいところです。

大企業であれば、能力が多少劣っていても
育成するだけの時間もありますし、周りが
フォローするだけの余力もあります。

スタッフ同士の人間関係を考えてみても、
たとえ派閥ができたとしても、その派閥が
いくつかあったりするわけですから、
何となくやり過ごせたりするものです。

でも、中小企業だとそうはいきません。

1人が足を引っ張ってしまうと、
全体の流れに大きな悪影響を
もたらします。

スタッフ同士の派閥ができようものなら、
人間関係にもかなり気を遣うものです。

過去の退職者を振り返ってみると
「その当時のうちにとっては、
良い子じゃなかったから…」と
思うスタッフが何人かいると思います。

さらに求人を出せば応募がある状況なら、
「今回は人選を間違えてしまったけど、
もっと良い子が応募してくるでしょ。」と
じっくり構えることができたと思います。

しかしながら、意外と早く景気が回復し、
他業種での求人が増えてしまった。

景気が回復しただけではなく、
労働人口が減っているわけですから、
そもそも人手は減っているわけです。

なので、難しい部分はあれども、
その打開策を真剣に考えていかないと
これからもどんどん苦しくなることは
目に見えているわけです。

◆過去の反省を活かそう

求人の話をするために、
なぜこのような過去の背景を
紐解いたのか?

それは、過去の経験の中に
問題解決のヒントがあるからです。

ひとつは、「ダメだったら次がある」
という発想をやめることでしょう。

採用をする以上、その人の人生を
変える可能性もあるという責任が
発生するわけです。

なので、「採用する以上は
きちんと一人前に育てよう!」
という気持ちで、採用通知を
発行しなければいけません。

「応募もないし、とりあえず…」
みたいな気持ちで採用してしまうと、
あなたのストレスは増えます。

まして、そう簡単に解雇することなど
できない世の中です。

「採用というのは、その人の人生を
変えてしまうかもしれない」という
心構えが大切でしょう。

もうひとつは、教育を担当する
スタッフの受け入れ態勢です。

これは教育担当者という意味でなく、
スタッフ全員が「ウェルカム!」
という気持ちで迎えることです。

新人スタッフの悩みで最も多いのは、
院内での人間関係です。

初めての職場に行く時に緊張するのは、
誰でも一緒です。

不安な気持ちで出社した時に、
先輩スタッフが歓迎ムードで
迎えてくれたら、緊張もほぐれて
気持ち良く仕事に取り組めるのは
当然のことでしょう。

少数精鋭の体制である以上、
即戦力になって欲しいと焦る気持ちも
分からないではありません。

でも、誰でも最初は初心者です。

覚えの良い子もいれば、
覚えの悪い子もいるのは確かです。

でも、絶対に覚えられないような
難しい仕事を与えているでしょうか?

新人スタッフの覚えが悪いと思ったら、
新人スタッフの能力の問題を問う前に
院内の教育システムや教育担当者の教え方を
見直したほうが良いでしょう。

大企業と違って、教育マニュアルの整備や
教育スペシャリストを育成するような余力は
ありません。

OJT中心で教えていくことになるし、
経験しながら覚えてもらうしかないのが
歯科医院の仕事です。

だからこそ、「新人スタッフに
どのように経験させることで
自分のスキルにしていってもらうか?」
という工夫は求められます。

この先、求人を出せばたくさん応募がある
という時代は、もうやってこないでしょう。

それは歯科医院に限らず、日本全体に
言えることだし、特に中小企業では
その傾向が顕著になるはずです。

だからこそ、一人前に育てたいと思える
人材を採用することが大切ですし、
医院全体で新人スタッフを育てる環境を
作っていかなければなりません。

「求人を出しても応募が無い…」という
苦しい状況に置かれているからこそ、
採用した人材を育てていくことに対して
今まで以上に工夫をしましょう。

採用した子をきちんと定着させていけば、
人手不足への悩みは少し緩和されます。

そして、「長く働くことができる環境」は、
新たな求人を出した時に、求職者から
『魅力的な職場』とみられる可能性も
高めることになりますので…