「スタッフが、あなたの思うような
行動をしてくれない」というお悩みは、
経営相談において最も頻繁に耳にする
問題のひとつです。

とは言っても、
あらゆる行動に問題があるという
スタッフは稀なケース。

すべての行動に問題があるわけでなく、
一部の行動に問題があるという場合が
ほとんどです。

「悪い子じゃないんだけど…」
「○○だけ、引っかかるんだよね…」
「あの部分が改善されたらなぁ…」

こんな風に、あなたから見ていて
スタッフのどうしても気になる一部の行動が
つい目にとまるのだと思います。

この「スタッフのつい目にとまる行動」を
改善する方法を考えてみましょう。

◆あの子の行動がなぜ目にとまるのか?

性格的に悪い子ではないけど…

このパターンの場合、
そのスタッフの人間性の全てを
受け入れられないわけでは
ありませんよね。

きっと、あなたの目から見ていて
「どうしても気になってしまう行動」が
一部あるということなのだと思います。

人間性の全てを否定したくなるような
ひどいスタッフではないので、あなたも
優しく指導したことはあることでしょう。

でも、なかなか直らない…

さらに、本人は悪気無くやっていて、
あなたもどう指導したら良いのか
頭をひねってしまうような状態…

無能で人間性に問題があるような人なら、
おそらくあなたの歯科医院にそう長く
勤められているはずがありません。

だから、やっぱり悪い子ではないのだと
思います。

このように冷静に考えてみれば、
性格や人間性の問題で片付けてしまうのは
少々乱暴だと理解できると思います。

そうではなくて、気になる行動をする原因を
きちんと理解して対処することを考えたほうが
得策でしょう。

性格が悪い子ではないのであれば、
なおさらです。

まずは、あなたから見て、
どうしても気になってしまう行動がある
という原因を考えてみましょう。

これは、意外と単純な話です。

その原因とは、ズバリ言いますと、
あなたとスタッフは別の人だから
ということです。

「みんなが俺だったら、どんなに楽か…」と
あなたも一度は思ったことがありませんか?

そうなんです。あなたとスタッフは、
別の人なのです。

だから、自分と同じ考え方をしないし、
あなたが気になることであったとしても
スタッフは気にしていないということは、
往々にしてありうることです。

よく考えてみれば、自分の思うように
行動してくれるスタッフばかりであれば、
スタッフマネジメントという考え方自体が
要らなくなりますよね。

あなたとあの子は別人だから、
気になるポイントが違っているだけ。

だから、あなたが気になることは仕方ないし、
あの子が気になっていないことも仕方ない。

気になるものを気にしないのも無理だし、
気になっていないことを気にするのも
無理な話です。

だから、変えられないものを変えるのは
やめたほうが、気持ちが楽になります。

まずは、その根本的な部分に気づいて、
気持ちを楽にしましょう。

◆あの子はなぜ○○するのか?

だからと言って、気になる行動を
そのままにしておくわけにもいきません。

なので、問題解決のためのアクションを
起こしていかなければなりません。

その最初のステップは、前述のとおり、
「自分とあの子は別人である」という
心構えを持つことです。

これが理解できたら、
次にスタッフが気になる行動をする理由
リサーチしていきましょう。

このリサーチで紐解いていきたい部分は、
過去の経験」です。

あなたが気になる行動というのは、
他の人から見ても気になる行動でも
あったりします。

おそらく、あなたがどうしても気になる
理由のひとつに、他のスタッフから、
あるいは患者さんからも指摘されている
ポイントからというのもあるでしょう。

だけど、本人は全く気になっていないのは、
「過去にはそれで許されてきたから」と
考えるのが自然です。

こういう話をすると、家庭環境や学校教育に
話が向いていく方もいるのですが、そういう
育った環境のような話ではありません。

もっと身近な部分での過去の経験でも、
自然に許されていたと考えるべきです。

具体的には、前の職場です。

前の職場では常識だったことが
あなたの職場では許されないというのは、
きっと数多くあるはずです。

歯科医院ごとに、あるいは企業ごとに、
組織のルールや考え方は異なります。

一方で、長く勤務した職場のルールは、
意外と身体に染み付いているものです。

特に、新卒で初めて勤務した医院、
歯科業界で初めて勤務した医院のやり方は、
後々に強く影響を及ぼします。

これは、あなた自身の経験を
振り返ってみると、よく分かるはずです。

歯科医師免許を取得して
最初に勤めた歯科医院の院長先生に
教えられたことって、良いも悪いも
強く記憶に残っていませんか?

あなたは開業する立場にあったので、
悪いことは反面教師として活かしたかも
知れません。

でも、スタッフはそうではありません。

従業員として働く心構えであったり、
歯科の仕事のやり方であったりと、
一定のルールとして教わっています。

これが「自分の常識」として
身体にしみこんでしまっていると、
なかなか抜けないクセに変わります。

こういうクセというのは、
そのスタッフに問題があるわけでなく、
教わった職場のやり方に問題があるだけ。

歯科未経験の他業種からの転職組にも、
「新卒で初めて勤務した会社の常識」は
色濃く残っていたりするものです。

事実、私も新卒で初めて勤務した会社の
部長から教わったことを今でも忠実に
守っていたりするものです。

ここで私が伝えたかったことは、
性格や人間性、家庭環境や学校教育の
問題にするのは、ちょっと違うということ。

どちらかと言えば、社会人として、
医療機関のスタッフとしての経験が
今に影響している可能性のほうが高いです。

「いやいや、うちの場合は新卒のスタッフが…」
ということでしたら、それはあなたの医院の
教育プログラム次第でどうにでも変わります。

そのぐらい、初めて勤務する環境の影響は
強く影響しているのです。

ですから、スタッフの過去の経験から
気になるクセを作ってしまっている可能性を
理解して、気になる行動の原因や背景を
しっかりリサーチしてみてください。

きっと、スタッフの過去の経験に
気になる行動のヒントがあるはずです。

◆気になるクセを修正するために

過去の行動をリサーチする目的は、
あなたとスタッフとの間にある
常識のギャップ」を見つけること。

これさえ見つかってしまえば、
「ギャップを埋めるための行動」を
していくだけです。

ギャップを埋めるために、
次のようなことをスタッフに
教えてあげましょう。

1.あなたの医院での正解行動は?
2.なぜあなたはそれを正解と考えるか?
3.そのスタッフの行動について、
具体的に何をどのように修正すれば
良いのか?

この3つの要素を丁寧に説明して、
きちんと理解してもらいましょう。

そして、「気になった時には、
遠慮なく指摘させてもらうからね」
ということも合わせて伝えましょう。

また、それは怒っているからではなく、
行動を修正して欲しいからであることも、
きちんと伝えておきましょう。

そして、行動が変わることに対して
焦らないことです。

過去の経験から染み付いているクセは、
ある意味では【習慣】になっているので、
修正するのには時間がかかります。

一度や二度言えば直るようなクセなら、
そこまで気にならないはず。

悪気無く無意識にしてしまっていることを
修正していってもらうわけですから、
時間がかかることは理解しておくべきです。

だからこそ、「気になったら指摘する」と
事前に伝えておくことが活きてくるわけです。

あなたも指摘することを宣言している以上、
スタッフにもその都度指摘されている理由は
思い出せるはずです。

ここは、根気がいる作業ですが、
ていねいに修正を試みていけば、
いつかあなたの医院の常識が
そのスタッフの常識に変わっていきます。

スタッフの気になる行動には、
「慌てず、焦らず、根気よく」の精神で
対処していきましょう。